今朝の空。薄曇り。
昨日、先月のセミナーで私が最後にした「チェッカー5箇条」の話がよかったと書いてくれた人がいました。すごく嬉しかったので、あの日話したことを文字としても残しておきます(読み原稿を写したものなので、実際に話した内容とはちょっと違うかも)。
チェッカー5箇条は、私がチェックをするときに心掛けていることで、何を疑って何を信じるのか(J-POPっぽい)に関する原則です。
つまり、私自身が忘れがちなので気を付けているということなんだけど。
①翻訳者の訳文を疑う
きっと大丈夫でしょう、と妄信してしまうのではなく、どんなミスもあり得るという意地悪な目は必要だと思います。一方で、
②翻訳者の思考回路を信じる
翻訳者がちゃんと筋道を立てて考えているはず、という部分は信じます。意外な翻訳でも、勝手に「間違えている」と決めつけて直さない。何か意図があるはず、と考えます。これは、自分に対しても同じで、
③自分の解釈と行動を疑う
原文を読み違えているかもしれない。修正し間違えているかもしれない、と常に疑って、そうならないように対策します。一方で
④自分の判断を信じる
検討し尽くしたら、最終判断者として毅然とします。訳者さんやコーディネーターさんがこう言っているから、と丸投げしないようにします。そして最後に、
⑤全員がチームだと信じる
翻訳者もコーディネーターもチェッカーもクライアント様も、関わる人全員が「いい翻訳」を作るチームだと信じます。誰もひどい翻訳にしてやろうなんて思っていない。そんなことはわかっているはずなのに、実際の仕事の中ではわからなくなっちゃうときがあるんですよね。
毎日の仕事の中では、私馬鹿にされているんじゃないかと思えるようなことも起きます。そうじゃないんだと自分に言い聞かせるためにも、この5箇条を日々目にするようにしています。
綺麗事と思われるかもしれませんし、これはたしかに綺麗事です。翻訳現場にはそんなこと言っていられない状況がたくさんあることは知っています。状況を良くするために先輩方が動いてくださっていることには感謝しかありません。
ただ、私自身は、この綺麗事を信じて仕事をしていきたいと思っています。誰のことも悪く言いたくはない。それは何よりも、自分のためです。必ずそういう感情は自分に返ってくると思うからです。
「この人はダメな翻訳者だ」「使えない」のように一度誰かのことをラベル付けをすると、ずっとその言葉を証明するものを探すことになる。そうじゃない人もいると思いますが、少なくとも私はそうなります。
不思議ですが、誰かのことを馬鹿にしたり相手の意図自体を疑ったりすると、実際にそういう仕事が多くなる気がしています。逆に謙遜だったとしても「自分なんて」のように自分を下げていると、翻訳会社からも信じてもらえなくなることがあります。
一方で、ミスの多い翻訳だったとしても、チェックのときに「なんでこんなこともできないの」と必要以上に感情を乱したりせず、むしろ意識的にいいところを見つけるようにすると、しばらくお付き合いをつづけるうちにその翻訳者さんが見違えるような訳文を納品してくれるようになることがあります。まるでスピリチュアルか引き寄せの法則のような話ですが、心理学にも「返報性の法則」という言葉があるそうですね。結局、心に抱いた気持ちって、たとえ文面だけのお付き合いでもにじみ出ていて、相手にはしっかり伝わってしまうということだと思います。
自分のことを馬鹿にしている人よりは、信頼してくれている人に対していいところを見せたくなるじゃないですか。自分なんて全然だめな翻訳者です、という人のことはやっぱり信用できない。だからこそ、自分のためにも、必要以上に攻撃的な感情は持たないほうがいいんじゃないかなと私は思っています。
***
どこがテンプレートなんだって感じですが、この話はぜひ伝えたかったので最後に無理矢理ねじ込みました。
昨日見たもの以外にも5箇条の話がよかったというお声はいただいていたので、話せてよかったのかなと思っています。
もうあのセミナーから1カ月たつんだなあ。本当に身に余るくらいの経験をさせていただきました!
■読書ログ■
・和書137:『図解 マーケティング思考が驚くほど身につく本』安原智樹・著、学研プラス、電子書籍
・和書138:『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』寺田真理子・著、雷鳥社、紙の本
・和書139:『おしまいおしまいでは終わらない昔話: 「なぜ浦島太郎は玉手箱を渡されたのか?」から始まるショートショート短編集』小林丸々・著、電子書籍(再読)
・洋書13:ビジネス書(おしごと)
■勉強ログ■
・和書51:7日目
・洋書4:70~97ページをオーディオブックで聴き直し&154~181ページの2巡目
・洋書7:課題範囲を読み込み
・NHKラジオ講座:22分
君にいいことがあるように 今日は赤いストローさしてあげる♪
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